時代の移り変わりとともに、人々のアウトドアに対する価値観や過ごし方は大きく変化してきました。それに伴い、キャンプ場に求められる設備や環境もまた、姿を変えてきたのです。
昭和初期:かまどと集団野営の時代
日本におけるキャンプ場の原点は、野外教育や体験学習を目的とした「かまど」が中心の施設にあります。たとえば飯盒炊爨などに代表されるように、少年たちが薪を使ってご飯を炊くなど、自然の中での実践的な学びが重視されていました。
この時代のキャンプは、大人数での集団的な野営訓練が主流。テントを張り、仲間と寝食を共にする体験そのものが重要とされていたのです。そのため、調理場やかまど、広々としたテントサイトなどが必要不可欠でした。今でも一部の歴史あるキャンプ場や私営施設では、当時の名残を感じることができます。
昭和〜平成:バーベキュー文化の台頭
時代が進み、多くの人がマイカーを所有するようになると、キャンプは一大ブームを迎えます。週末や夏休みに家族や友人とともに訪れ、炭火で肉を焼いて楽しむ「バーベキュースタイル」が定着しました。
ホームセンターの普及も追い風となり、アウトドア用品が手軽に手に入るようになったことで、日本独自の“バーベキュー文化”が育まれていきました。大人たちはお酒を交えた宴会を楽しみ、子どもたちは自然の中で自由に遊ぶ――そんなにぎやかで社交的なキャンプスタイルが、多くの人々に親しまれていったのです。
今なお「キャンプ=バーベキュー」というイメージが強いのは、当時の文化の名残とも言えるでしょう。しかし、バーベキューはあくまで“料理”であり、アウトドアそのものではありません。昭和の時代にアメリカから伝わったスタイルが、日本で独自に発展した結果、テントがひしめき合う「テント村」のような光景が生まれたのです。
令和:現代のキャンプ
静けさと“自分らしさ”を求めてそして今、時代は令和へと移り、キャンプ場の在り方もまた大きく変化しています。
現代のキャンプにおいて求められているのは、にぎやかさよりも「静けさ」、人との交流よりも「自然とのゆったりとしたふれあい」です。自分の車でサイトに横付けし、お気に入りのギアを広げて自分らしい時間を過ごす、そんな“個”を重視したキャンプスタイルが主流になっています。
そのため、近年のキャンプ場では、以下のような特徴が重視されています。
かつての“訓練”や“宴会”の場から、いまやキャンプは“癒し”や“リフレッシュ”の空間へと進化しました。